■「丈夫で飼いやすい」は危険!?

スズメダイを始め、このフレーズで説明される魚をすぐ飼育決定しないでください。その解説と対策を述べます。


ゴマフエダイ。丈夫で飼いやすいですが、気は荒くでっかくなります。

●「小さい」「大人しい」とは言っていない

 丈夫で飼いやすい。つまり汚染などの負荷に強く餌やりが簡単。それは飼育に都合がいいです。それではここで丈夫で飼いやすい海水魚の名前を並べます。

ボラ、メジナ、クロダイ、マハゼ、イシダイ、クサフグ、カサゴ、ハオコゼ、カワハギ、カゴカキダイ、コショウダイ、オヤビッチャ、アイゴ、ナベカ

 ランダムに選ぶというのは難しいですが、比較的身近な種類です。この中で「小さい」のはマハゼ、クサフグ、カサゴ、ハオコゼ、カワハギ、カゴカキダイ、オヤビッチャ、アイゴ、ナベカです(30cm以下程度)。「大人しい」のはボラ、カサゴ、ハオコゼです(カサゴは同族とはある程度闘争)。「小さい」かつ「大人しい」のはカサゴ、ハオコゼ・・・とだいぶ減ってしまいました。淡水魚でも、レッドテールキャットあたりが丈夫で飼いやすいと言われていて「冗談じゃない、それより大きさが」と思います。
 つまり「丈夫で飼いやすい」というフレーズは、一見良い点を主張しているようで、実際は一般人が飼育するには難ありの魚を、都合の悪い点を隠して売るための決まり文句である場合がよくあります。熱帯海水魚ならばクマノミ、スズメダイ、テンジクダイ、ハナダイ、ゴンベ、メギス、タマガシラ、ウツボ等・・・ってだいぶ該当するようです。混泳のテクニックなんて面倒くさい私は、安全を取って大人しい種類で固めています。

●種類ごとの大きさ、性格などを覚える

                     
                       トラギスの仲間は小さいが獰猛で大きな魚も食べる・・・

 しかし、最初は丈夫で飼いやすい海水魚で始めるのが無難です。私も通常は汚染に弱そうな魚や餌やりが難しい魚は避けています。大きい魚や凶暴な魚を避けるにはどうすればよいでしょうか。それは多くの種類の魚を知ることです。魚は科によってたいてい大きさや性格の傾向があります。全体的に小さいグループはスズメダイ、ハナダイ、テンジクダイ、ハゼ、ギンポ等、大きいグループはアジ、イサキ、ハタ、ニザダイ、ウツボ等、大人しいグループはボラ、クロサギ、ヒイラギ、ネズッポ、ヨウジウオ等、といった具合です。
しかし、例外を抱えるグループもよくあります。例えばスズメダイで例外的に大人しいデバスズメダイ、同じく大きめになるオヤビッチャです。自力で採集できるかペットショップに売っているものだけでも魚の種数は膨大ですが、好きなグループがあればそこに集中して各種の大きさや性格を覚える、というように工夫しましょう。

●複数の情報源を見る

 それでも情報源が意図的でもそうでなくても間違っていて、例えばカゴカキダイが大人しいと言われている場合があります。これは運良く大人しい個体を引いたか、水槽の状況;同種の数や混泳相手などによって大人しく見えたのでしょう。カゴカキダイは気が荒いとしている資料が多数ですし私も確認しています。こんな時に飼育サンプル数があって、例えば総計20匹くらい飼育して皆大人しければ信頼できるため、私はサンプル数を記録、公開しています。生き物を飼育するなら、様々な項目を記録すれば他の人が同種を飼育する際に役立ちます。もっとも、他人に紹介する気がなければ記録しないのもしょうがないですが、もったいないことです。そういうわけで、各種の情報は複数の情報源で見て飼育するかを判断しましょう。私は一つでも「気が荒い」情報がある種もしくはグループは飼育しません。例えばアイゴの仲間とコショウダイの仲間は熱帯種は大人しいようですが、種名アイゴ、コショウダイが危険なようなので全種飼育を避けています。ハナダイも大人しいという情報がけっこうありますが、結局気が荒いと思っています。カサゴやクロサギは好んでいますが。

●生き物各種の飼育情報を作るのは私たち

 このように海水魚や他の生き物の飼育情報は飼育する側にとって重要ですが、珍種でない比較的有名な種なのに情報が断片的か、件数が少ないことがよくあります。タカサゴは熱帯魚で特に虚弱ではなく、数は多いのに飼育している人がほとんどいません。ペットショップに入荷することも非常に少ないです。ある通販サイトで「同族とは争う」とされていますが、ここの飼育情報は信頼できません。もっと身近な種類で、イボトゲガニは小さなタラバガニみたいで私は気になるのですが、飼育情報が乏しいです(イソガニと同様でいいようです)。どの生き物でも、飼育した人はその記録を誰でも見られるように公開してもらえると嬉しいです。「飼育例が多いから、今更見せても意味がない」ような種類はほんの少しです。その情報を見た人が飼育を始めて、また記録を公開して海水魚飼育の世界が広がっていきます。それは自然の恵みを味わうことに繋がります。

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