並ボラ1 ボラ(真ボラ) Mugil cephalus  ボラ目ボラ科
 全長:60cm
 採集・購入時の全長:2.7~4.5cm
 飼育数:22
 餌やり:楽
 性格:一応大人しい

 画像個体の全長:4cm

まずは本種を覚えれば他種が見つかる

 このサイトではボラの仲間がたくさん登場するから、普通のあのボラは真ボラと呼ぶ。3.5cmくらいの大きさから胸鰭根本に青斑(黒く見えることも多い)があるため区別しやすい。それより小さくても側面から腹側が強く輝き、体は横に薄く、鱗がなかなか見えず体が未発達に見えるという特徴がある。本種の顔や体型を覚えていれば他種を見たときに違いがわかる。一般向けの魚の図鑑ではよく「ボラとメナダの違いは、目の周りの脂瞼を見ればわかる」などと書いてあるが、脂瞼は大型個体の顔を拡大してようやく見えるうえ、図鑑を見ても肝心の脂瞼がどれか分からないという有様。実際はボラの仲間は顔、胸鰭根本、体型でだいぶ区別でき、縦列鱗数も加わればより正確になる(鰓蓋の後ろから尾びれの前までまっすぐ数えた鱗の数)。

 真ボラは、河口や海で魚を採集していると普遍的に見られる魚である。しかし、成魚と幼魚で体型がかなり違う大人の頭は細く体は円筒形に近いが、3cm以下の小さな子供は頭が丸く、体は側扁するのだ。このため初めはボラとは思わずトウゴロウイワシと思っていた。他にもトウゴロウイワシやナミノハナと間違えている人が見られる。子供と大人で形態が違う、少なくともそう見えるのは他の種類も共通である。

 まずは持ち帰り方に気をつけないと飼うこともできない。というのは真ボラは傷に弱く、網ですくって水から上げたり、手(手袋でも)でキープ容器に移すと必ずというほど死ぬのだ。これがわからず、最初は30匹程度持ち帰ったが見ているうちにどんどん死に、2日後に生き残ったのはたった8匹だった。正解の持ち帰り方は海水魚の取り扱い、運搬を参照。どうもこの持ち帰り方は採集者には当たり前らしく、ボラの持ち帰り方に注意するという情報は1件程度で、多くのWebサイトでボラは「飼育は簡単」となっていた。高温・低温や汚れにはごく強いのだが…(ゆえにまずい魚と認識されている)。また、ボラの仲間でこれほど虚弱なのは小さい真ボラぐらいらしく、今のところ他の種類は一瞬上陸してしまっても、触らなければ何ともない。

 持ち帰って、2日後に生き残っていればまずは安心だと思う。あとは餌を食べればいいのだが、ボラは自然下ではプランクトンや藻類、沈殿物(デトリタス)を食べるものの、飼育下では人口餌を与えていれば、水槽に入れて数日後に食べる。採集ものだと3日後が基本のようである。ただ、口が小さいため極小粒をやるか、フレーク餌を砕いてやる。早ければ水槽に入れた当日や1日後に砂撹拌を始める。食べ始めれば、もう餌は与えるだけ食べるようになる。もちろん度を超えると死ぬと思うので、体重などから考えて適量に。真ボラは代謝が早いのか痩せやすく、普通の魚より多くてもいい。水槽に慣れると、与えた餌を食べるほかにガラス面などの藻を顔を振って食べたり、砂を口に入れて沈殿物や表面の藻類を食べたり、餌のない水面をゴクゴクして油膜を取ったりする。その様子は見ていておもしろいものだ。

 だが常に餌を食べようとしており、開けている環境だと落ちている餌ももれなく食べる。そうして一度水槽内の餌を食い尽くして、他の生き物に餌が渡らなくなったことがあった。混泳魚はおとなしい、というか臆病なアシシロハゼのみで、最初は真ボラよりかなり大きかったが、体格が近づくと真ボラをいやがって餌をほとんど食べなくなってしまった。しかも、真ボラはハゼにつきまとって体の下の砂ばかり食べたり、たまに体表面をなめる(?)ようになった。ボラはおとなしく、魚などに一切悪さをしないとされているが、それは少し違うのだった。このままでは水槽の生き物が真ボラ以外死んでしまうと思い、真ボラを2匹に減らした。その後、訳あって1匹になった真ボラは元気に動かなくなり、泳いでいるイシガレイにつくか隠れてばかりになった。しかも、だからといってハゼの食欲は回復しなかった。新しい幼魚を加えても、合計2匹で大きさも違うからか真ボラは満足に泳がなかった。

 その後再び数を増やしたが、今度は少し怖いカレイがいるからエサを独占とはいかない。ボラに構わずエサに突っ込むアカメバルやムラソイも加わったあたりで、アシシロハゼがある程度餌取りに来た。ということで、ボラを飼育する際は臆病な魚に注意しよう。小さなエビ、カニ、ヤドカリに餌を渡らせるには、カキ殻を積むなどして隠れ家を大きな、入り組んだものにすればいいだろう。計画的に飼えば、水槽のコケをある程度除去したり、油膜を吸うなど、優れた魚である。悪食で、二枚貝のフンやムラソイの吐いた金魚の餌を食べた。

 餌をたくさん食べるので成長は早いだろうと思いきや、一度目の飼育では1ヶ月に1~1.5cmしか伸びないように見えた。成魚が60cmの魚にしては成長が遅い、生後1年で20cmにもなるのだろうかと思ったが、8cmだと思っていたものを死んだ後に定規で測ったら10cmだった。水槽の魚の大きさと成長はわかりづらいらしい。実際は、約3ヶ月で7cm伸びたことになった。二度目は6月に採集しておりさらに成長が遅く、6ヶ月で3cmしか伸びなかった。それもあって小型種のセスジボラだと思っていた。それどころかそこそこ大きくなっているのは8匹中1匹のみの上、餌は食べているのにだんだん痩せていって死ぬことが数度あった。他のボラは痩せてはいないのだが、人工飼料では真ボラの栄養要求を満たせることが少ないのかもしれない。

 一般家庭で60cmの、しかもよく泳ぐ魚を飼うのは厳しいので(おまけに真ボラは平凡な魚という扱いである)、真ボラを飼うのはのちに食べるか、捕まえた場所に放すのが前提となる。でも、特に大きくなった生き物を逃がすのは飼育者も生き物も負担が大きいから、本当なら逃がす前提の飼育は避けたいところである。自然下ではほとんど常に豊富な藻類を食べており、飼育下ではその栄養要求を満たすのは非常に難しいから、成長は遅くなるだろう。


成長速度(通常1ヶ月ごとに計測、大きさ単位はcm)

真ボラ1  4 →4.5 →5 →5.5 →6 →6.5 →7.5 →7.5 →8.5(他個体は未測定)

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