■飼育失敗談

これを守らないと海水魚がすぐ死ぬ、という飼育の決まりを記します。

●濃い海水を水槽に入れない!

 水換えで比重1.026か1.028の海水ができてしまい、少量入れてバケツに真水を足しました。水槽の水量からすると確かに少量でしたが、翌日ほとんどの魚が瀕死か死にました(エビ、カニは無事)。このことから、新しい海水は薄い分にはそれほど問題なくても、少しでも濃いと死ぬと思っています。この難しさは、海水水槽の水換えのリスクが高い要因となっています。水換えは、疲れて手抜きしそうな時にするのは避けましょう。

●海水魚に赤虫をやるのは危険!

 赤虫はユスリカの幼虫で、淡水魚の餌にはよく使われます。冷凍餌で、ミジンコでは小さくアミでは大きい時に赤虫をやり続けると魚が死にました。赤虫以外に原因は考えられませんでした。昆虫は海にはほとんどおらず、汽水域に現れない海水魚が食べる機会は非常に少ないでしょう。というより赤虫はゴムのように「柔らかいが丈夫」な感じで、消化が悪いという情報もあり、それを海水魚にやるとすぐ死にやすいのでしょう(甲殻類の堅さとは違う様子)。ごく短期間ならたぶん使えます。問題なく使っているような人もいますが、長期の記録がありません。小型ゴカイの冷凍餌でもあればいいんですけれどね。なお、淡水魚を餌にすると食べた魚が苦しみ出して死亡したという情報もよくあります。

●砂やろ材は使うのをやめたら再利用しない!

 引っ越しのため、水槽の砂を取り出して日干しし、環境が整ってその砂を水槽に入れました。すると水が白濁し、ボラでも元気がなく2匹死にました。だんだん治ると思いきや状況が改善しないので、砂をなるべく取り出してようやく少しずつ濁りがなくなってきました。次に、短期間使って使用をやめていた投げ込みフィルターを新しい水槽に使おうと思い、今度はろ材を新しくして使用しました。これでも水が濁りましたが、1日で濁りが薄くなってさらに翌日透明になりました。ろ材を使い回していたら壊滅的だったに違いありません。次に引っ越す場合は砂やろ材に気をつけます。

●状態の怪しい生き物は買わない・持ち帰らない!

 これはペットショップを利用する場合によく言われていることですね。採集したワニグチボラが1匹しかおらず仲間が欲しくて、同種を2匹買いました。5匹いたうち1匹は切り傷がありましたが、どうせすぐ治ると思い大きさ優先でこれを選びました。次第にこの傷は拡大しているように見え、やがて餌を食べなくなり死にました。これはただの傷ではなくビブリオ症という病気だったのです。体に赤~黄色の傷状のものができ、発症すると拡大していきます。その後すぐヨコシマタマガシラに「傷」が多数生じて、餌をほとんど食べず沈んでいました。そうそう病原体は発生しないと思って水槽にヨウ素殺菌ろ材を入れていなかったので、ここで入れるとヨコシマタマガシラが浮くようになってきました。状態が良くなってきたのかと思いましたが、翌日死んでいました。タカサゴも「傷」が出来て餌食いが悪く、買ったもう1匹のワニグチボラにもうっすら「傷」があるようだったので、元気なものの隔離してグリーンFゴールド顆粒で薬浴しました。それでもタカサゴはその日にほとんど泳がなくなり翌日死にました。ワニグチボラも病気が進行し、薬が薄かったと思って増やしましたが結局死にました。

 ビブリオ症は治療方法が確立されていないという情報もありますが、ともかく発症した個体が全て1週間以内に死んでいるので、白点病より凶悪なんじゃないかと思います。傷口から感染するようですが、最初のワニグチボラ以外は大傷がつく要因がなく、ちょっと体をこすっただけでも感染するとなれば実質感染力は強いです。一応、他に水槽にいた魚は無事でした。わざわざ怪しい個体を買わなければ、ちゃんとヨウ素殺菌ろ材を入れていれば、阻止できたかと思うと痛いです。ちなみにそれより以前にオニボラを買った際、スズメダイのせいかヒレ欠けがありましたが問題ありませんでした。また採集の際は、欲しい種類でも痩せていたりボロかったりしたら逃がしています。

●砂はイキモノ!(2017年3月追記)
 3つの水槽のうち、中型水槽の砂が不足気味で底が露出することが多かったため、海の砂を持ってきて入れました。始めは魚の活性が上がっていましたが、数日後一部の種が底に沈んでいることが多くなりました。やがてろくに餌も食べなくなり、ついには次々死んでいきました。外掛けフィルターが詰まり気味だったので酸欠かと思っていましたが、死魚を見ると例の傷があったのです。前日ちゃんと餌を食べて、ちょっと前には俊敏に泳いでいた魚が死んだこともあります。砂には多くの微生物が含まれています。水温合わせもせず入れたのでこれが死ぬ→水質悪化→魚が弱りビブリオ再来、ということが起きたのだと思います。がっちりプロテインスキマーを使っていても駄目な時があるのです。ヨウ素殺菌ろ材も無意味でした。これを冬の砂事件と呼ぶことにします。起きた3月は普通なら春ですが、2017年の3月は寒かったので冬としています。
 今のところ、ビブリオ症は発症すると致死率100%です。普段俊敏な魚が大人しくなったら即薬浴するしかないでしょうか。死魚をじっと見て「あ、赤い」と気づくレベルの変色の場合も多く、形態異状はわかりづらいです。体の広範囲が赤以外に変色するのが内臓性でしょうか。体表性だとそこそこ治る感じですが内臓性は餌に薬を入れないと無理なようです。白点病より危険だと思うのですが、白点病のような詳細が見当たりません。白点病の方はダラダラ続きつつも回復することが十分あります。白点病の方が強い点は、ビブリオは原核生物ですが白点虫は動物と同じ真核生物で、細菌を殺す薬が効かないと考えられます。

●スジエビやカニと魚の混泳は危険!カニ同士も

 魚の動きを見ていると、エビ・カニがこれを捕まえられるとは思いませんでした。近場で普遍的にいるエビは模様がないに近いユビナガスジエビで、地形変化で岩場が多くなるとイソスジエビもふつうに見られるようになりました。スジエビ系は魚を食べることが有名ですが、長い間それを確認することはありませんでした。しかし大きなエビが2cmのシマイサキや1.8cmのカゴカキダイを狙っているような感じがあり、実際カゴカキダイが消えました。寝ている魚は動きが的確でないのと、エビが瞬間的に高速で動くのが見られ、これなら魚を捕獲することもできるだろうと納得がいきました。十脚類は大丈夫と甘く見ていましたが、ヤマトオサガニが脚を食べられ、脱皮した後のテッポウエビが食べられました。スジエビの仲間は入れるとかなりメンバーが限られてしまうようでした。一方、コトヒキには小さくてもかじられました。多くのカニも魚にとって危険と考えられ、オサガニの仲間は安全なようです。
 タカノケフサイソガニとそれより少し小さいヒライソガニを同居させると、すぐにヒライソガニのハサミが一つなくなりました。また、同居していた小さなタカノケフサイソガニのペアがいましたが、メスが突然脱皮後のオスを半端に食べました。オウギガニと小さいショウジンガニを一緒にするとこれまたショウジンガニのハサミが一つなくなりました。速いはずのショウジンガニと鈍いオウギガニでもこうなるのです。飼育には隔離ケースを使うのが確実でしょう。ヤドカリでも、大型のユビナガホンヤドカリがシロギスの尾びれを食べたことがあります。

●ヒトデは死ぬと異臭を放つ?

 近所の海岸にはスナヒトデがよくいるので一度飼育しました。よく動くのですが、カニかヤドカリに食べられたらしくすぐバラバラになってしまいました。そしてとてつもない異臭を放ちました。ヒトデ全般がそうなのかはわかりませんが、死んだ時の異臭がつらいので飼うときはよく考えるべきです。

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