■簡易飼育方法

急に海の生き物を飼育することになった時などの飼育方法です。簡易飼育ながら、失敗がないようくどく書いています。


●必要な物

水槽
水槽の蓋
海水が乾燥すると塩が残り、小さな水滴でも溜まると塩の塊が出来上がります(塩ダレ)。それに、魚やエビは飛び出して水槽外に落ちる可能性があります(経験上カニとヤドカリは環境が悪くなければ脱出しません)。見た目を気にしないのであれば、専用のガラス蓋を買わなくても無職透明なビニール袋とテープで蓋をして構いません。どんな蓋にしろ、あまり大きい隙間が残る場合はスポンジや小さく縛ったビニール袋などで塞ぎましょう。
水槽台30cm規格水槽であれば丈夫な棚などでいいと思います。なぜなら30cm水槽の水槽台が薄いですから・・・。知っている限り、組み立てにはプラスドライバーを使用します。

バケツ、桶など私は10リットルバケツを使っています。
カルキ抜き粒タイプは安いですが使いづらいです。液タイプを買いましょう。

人工海水の素開封したら強力なテープでがっちり封をしましょう。緩いと塩が固まって使いづらくなります。固まった場合は割るのが難しいので、地道に削りましょう。海から全ての必要な海水を持ってくるのは大変です。病原菌などのリスクもありますが、濾過バクテリアを持ってこられたり微生物がいい効果をもたらしたりするので一部の量は持ってきましょう。
比重計針の位置を見るタイプで十分です。
定規など長いヘラ状のもの効率よくカルキ抜きや海水の素を混ぜられます。
水温計こだわるなら磁石タイプだと落ちづらくて安心です。
フィルター簡単に捕まるホンヤドカリやイソガニの仲間であれば、海の生き物の中で非常に汚染に強いので、投げ込みフィルター一式(金魚のブクブクみたいなもの。本体、エアチューブ、エアポンプ)で足ります。酸素供給を水面からの溶け込みに頼るタイプ(コーナーフィルター、外掛けフィルター、外部フィルター)は、あまり蓋の隙間がないと酸欠になりがちです。なお、水生の生き物を活かすにはエアレーションが必須です。水面から酸素の溶け込みがあってもほぼ生きられません。
海の砂か砂利細かい方が生き物が潜れたり、表面に付く微生物が生き物の餌になったりしますが、厚く敷くと嫌気環境域が増えて汚れが溜まりやすくなります。底一面を覆って数ミリ厚みがあれば十分でしょう。あまり大きいと生き物が歩きづらいです。種類によっては砂なしで飼育できます。一応お好みの砂を買っても構いません。
カキ殻など隠れ家多くの生き物は隠れる場所がないと落ち着きません。カキ殻は鋭く不用意に触れませんが、形状が複雑で隠れ場所が多く、phをアルカリ性に傾ける効果があります。小さな生き物がついてくることも多いです。嫌いな生き物は後で除去してもいいです。
観賞魚用の網生き物をすくったり、食べ残しを出すのに使えます。魚は水から出さないのが最も安全なので、泥や細かい砂をすくわなくて済む程の網がいいです。
タッパー生き物を水から出さず移動するのに使うのと、水合わせでは大きいタッパー(1リットル程)に生き物を入れ、小さいタッパーで水をくみます。物から水滴が落ちるのを防ぐ等、他にも便利に使えます。
人工飼料最初に飼うのは楽に人工飼料を食べる生き物がいいです。むきエビやしらす等は水が汚れやすく常用するには向きません。多くの海の生き物は人より食事の頻度・体に対する量とも少なくていいです。餌は少しずつあげて適量を把握しましょう。フレーク餌など、沈みにくい餌は浮く魚以外の生き物には向いていません。沈下性の粒餌を選びましょう。沈下性でも入れてストレートには沈みにくいので、すぐ沈める場合は物でつつきます。1種類を長期間使用すると飽きて食べなくなる恐れがあります。
ヒーター(冬期)温帯の生き物であれば、部屋の暖房で水温が16℃ぐらいにならないなら必要です。使用する場合は18℃や20℃設定で足ります。とりあえず飼育するなら水温設定を変えられる必要はないです。

●木は入れないで!
 海の生き物は酸性の水に弱いです。水槽の飾りや隠れ家に木を入れたい人もいると思いますが、水を酸性に傾ける性質があるため入れないでください。自然下の海では、フナクイムシやヨツバコツブムシなど木を利用する生物が生息しますが、海水水槽を始めていない皆様は今はそれを飼う時ではありません。

 潮干狩りや磯遊びで出会った海の生き物の飼育を始めることにして、海水魚を扱うペットショップに聞いた場合、融通の利かない回答だったり余計な物を必要と称したりすることがあるかと思います。彼らはイソガニあたりを飼ったことがないんでしょうか。最初から飼育の難しい生き物を持ち帰るとしたら諸々の貝類ぐらいなんですけれど。とはいえ、本当に必要な物が欠けないように淡水の水槽も参考にするといいです。
 上に実際のほぼ確実に必要な物を並べました。水質検査なんて要りません。気になるならやればいい程度です。サンゴ砂が必要と言う人々の最寄りの海はサンゴ砂豊富なんでしょうか。一部使うのもありですがカキ殻できっと足ります。水槽用クーラーどころか部屋クーラーもホンヤドカリ、イソガニ、アゴハゼとかのごく負荷に強い生き物には不要です(尋常でなく暑くなる家を除く?)。水槽立ち上げで一番困難だと思うのは、水槽台の組み立てです。重いのとネジ締めで力を使い、組み立て中は部屋が狭くなります。
 死なせるのが怖くて一切飼育を控えたら、自然環境や生き物への関心は途絶えてしまいます。水槽立ち上げ初期に、欲張って生き物を続々増やさなければやっていけます。海水も淡水も関係なく、水中の生き物の飼育は難しいと思ったら難しい程度の難易度です。一度考えたら飼育を始めましょう!

●水槽立ち上げの手順


水槽台を使う場合は組み立てる


水槽台の上に水槽を置く水槽一式を動かさなくていいよう、場所を考えて置きましょう!

水槽に水道水を入れる生き物がいないのでバケツでなくていいです。

水にカルキ抜きを入れる少し少なくても動物は死なないはずです。少し多くても水中で分解されます。

水に人工海水の素を少しずつ入れ、比重計で比重を見て適した比重にする海水の素を多く入れてしまうと水を足す必要があります。水槽やバケツが満水になると作った海水を少し捨てなければなりません。海水の素が十分溶けるまでエアレーションが推奨されていますが、バケツ規模より多い水量の水換えだとどうするんでしょうか?作った海水が白く濁る場合は濁りが薄れるまで待つといいですが、作ってすぐ入れて被害が出たことはありません。

水槽に砂か砂利を入れる先にフィルターとヒーターを入れると砂が入ってしまいます。

水槽にフィルター、水温計、隠れ家を設置する(冬期はヒーターも):ヒーターは低い位置に設置しますが、生き物が挟まらない高さにしましょう。

フィルター、ヒーターを起動する
ここまでを生き物を用意する前に達成するのが理想

生き物を、採集地の海水を少し入れたプラケースや大タッパーに入れる生き物は小タッパーで水から出さずに移動しましょう。飛び出す生き物は蓋をして防ぎます。カニ、ヤドカリ等は水から出ても大丈夫です。

生き物のいる容器に、水槽の海水をちょっとずつ時間をかけて足す(水合わせ)満水になったら元の水量まで海水を捨てて、また水槽の海水を足します。


水合わせをしたら生き物を水槽に入れるかなり丈夫な生き物なら2回目の水足しの後でいいです。移動には小タッパーを使います。



お疲れ様です。これであとは様子見です。
移動してすぐは餌を食べない生き物が多いです。翌日まで心配な場合、数時間後にごく少量あげてみましょう。
立ち上げ初期は濾過が弱いです。水中のアンモニアや亜硝酸が多く、生き物への負担が強くなります。餌を控えめにして水が汚れるのを防いだり、水換えの頻度を多くして対処しましょう。水換えは水槽の水全部ではなく約3分の1、多くて約2分の1を換えます。
濾過が出来上がれば、小型水槽でも水換えは2~3ヶ月に1回で済みます。

以下には、あると便利なおすすめの物を記します。

長いトング:安物でいいです。隠れ家を動かしたりヒーターの位置調整をしたりできます。
トレイ:網やタッパーなどの道具を入れるのに便利で、物を入れていれば蓋の重しにもなります。
堅い定規:安上がりで水槽壁のコケ(正確には藻)を落とせます。
歯ブラシ:物についたコケを落とすのに使えます。
水換え用ポンプ:水槽の水を捨てるのに使います。水槽がポンプの推奨サイズより小さいと排水がやや難しくなります。
空のお茶か水の500mlペットボトル:ジュース等のペットボトルは心配で使っていません。新しい海水を水槽に少しずつ入れたり、水槽の水を移動するのに使います。これでバケツの海水を全て入れることはできないので、あとはタッパーで入れて、残ったごくわずかの海水をバケツで流し込んでいます。
プロテインスキマー:微細な泡に水中の汚れや微生物などを付着させて、水槽から除去する器具です。淡水だと水の粘りが少なくて使えません。エアポンプ(強力なものが良い)とエアチューブが必要なので、同梱されているか確かめましょう。空のペットボトルも必要で、1.5リットル以上が便利です。
ヨウ素殺菌ろ材:病原体など微生物を吸着して死滅させます。濾過バクテリアはろ材に多く付着するので心配いりません。入れていると魚の病気が悪化しないので、私は効果があると感じています。場合によっては効き目がありません。
魚の観察ケース:水槽の魚を撮影するのは通常難しいです。元から止まらなかったり、カメラを向けると逃げたりします。特に小さいとピントも合いません。観察ケースは、真横からがっちり撮影したり大きさを測ったりするのに使います。飛び出しには注意しましょう。
これに入れても止まらない場合は、タッパーの蓋など板状のものをそっと入れれば動きを制限できます(生き物を潰したりしないように注意!!)。逆にこの方が止まらない個体もいるので個別対応しましょう。
隔離ケース:調子の悪い個体や獰猛な生き物などを隔離して飼育できます。魚には狭く、餌付けと緊急避難の時ぐらいでないと有効ではありません。

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