■よくある質問

海水魚を飼育・採集するにあたって、よくある質問です。下の方にはあまりない質問もあります。

Q.海水魚って難しいんでしょ?

A.難しさは淡水魚と変わりません

 「非常に易しい」から「激ムズ」まで揃っています。海水特有の決まりを守れば大丈夫です(飼育失敗談を参照)。いわゆる近海の生き物は、動乱の多い富栄養的環境に生息するため簡単に飼える種類が多いです。汽水域に現れる海の生き物も、水温や比重などの変化に強いと考えられ飼いやすいです。多くのサンゴ礁の生き物は、動乱が少なく貧栄養的な環境に生息するため負荷に弱いと考えられます。
 そのサンゴ礁の生き物の中ではクマノミやスズメダイの仲間は全体的に丈夫で、ここから海水魚飼育を始める人が多いです。それでもいいですが、身近な海で見られる生き物から始めるのがおすすめです。採集行為は、マナーと節度を守れば破壊的にはなりません。海水魚飼育者が熱帯魚オンリーばかりなのは、業界が多くの生き物や余計な道具を売りたいために、雑誌などで丈夫な近海魚の存在を隠蔽しているためと自分は思っています。

                     
 真ボラは比重1.028か1.030の海水で生きているのを見たことがあります。「よく生きているね」を通り越して「なんで生きてるの!?」と思いました。



Q.海水魚ってお金がかかるんでしょ?

A.淡水魚の設備+人工海水の素、比重計で飼えます

 某知恵袋あたりで「海水水槽を始めたい」という質問があると、「大きな濾過設備が必要」「プロテインスキマーが必要」「殺菌灯が以下同文」「水質検査が」「海水魚用の餌が」「難しいよ?」「そんな設備じゃ無謀だ!生き物がかわいそう!」「1ヶ月~半年立ち上げだ!」「小型水槽ではムリ!」という答えが湧いてくるのがテンプレです。でも適当に海に行ってハゼやイソガニを飼うと、こういうのは間違いというのがわかります。数種類だけでは「そういう生き物もいる」で片付けられますが、小さな少数の生き物をじっくり飼うなら、淡水水槽と水が違うだけでたいていの生き物は飼えます。一度海水を扱えば海水水槽は怖くありません。海水を扱う分のお金をかければ済みます。大きな、もしくは多くの生き物を飼いたいならプロテインスキマーも使用すればいいのです(海水中の汚れなどを除去する器具)。なお、私はサンゴは漠然と難しいと思っていて手を出しません。
 上述の道具はちゃんと使い道がありますが、恐怖を煽って余計な道具を買わせるのはよくありますね。そもそも海の生き物を飼育したことがない人物(エア飼育者)だって来ていると考えられます。逆に言えば上述と異なるような回答者は信用できる可能性があります。



Q.近海魚は丈夫でも地味じゃん(酷い場合はモノクロ呼ばわり)

A.綺麗な種類は少なくないです

                     
                         ハオコゼ。綺麗だと思うのですが、どうですか?

 綺麗というのは水準が曖昧ですが、並カサゴやハオコゼは赤茶色の複雑な模様をしています。アナハゼなど温帯性のカジカは、海藻に紛れる緑系や赤系の複雑な模様です。釣りで嫌われることが多いヒイラギは銀色地に黒や黄色の模様がありますし、クロホシイシモチやキヌバリなど典型的熱帯魚と混泳して見劣りしない種類がちょくちょくいます。色彩とは別に、形態がユニークだったり熱帯にいないグループもおり熱帯魚と同格の価値があると思います(同じ生き物だからーって話ではなくて)。熱帯魚が全体的に鮮やかさで勝ると思いますが、近海魚が海水魚飼育者の間で過度に不遇なのは、海に行けば簡単に手に入ると思われているからなんでしょうか。
 逆に熱帯魚でもカラフルじゃないものは多いです。人気トップのチョウチョウウオ、ヤッコ、ニザダイにも「イマイチかな・・・」という種類がいる、どころではありません。スズメダイは黒っぽい色中心の種類がなかなか多いです。アジは熱帯に様々な種類がいますが、鮮やかさが売りではありません。熱帯の砂地に多い海水魚はボラ、クロサギ、ヒイラギ、カレイ等で(だいたい私の好きなグループ)、色は隠蔽色だったりくすんだ色です。そのためか熱帯魚でも不人気です。オニボラはボラ類で例外的に黒と黄色のカラーがありますが、それでも他の熱帯魚より値段が安いです。かわいくて悪さもしないんですけれどね。



Q.近海魚って水槽クーラーが必要でしょ?

A.部屋クーラーで足ります

 近海魚はよく高温に弱いと言われてもいます。しかし多くの種類は26~27℃で問題なく、夏の部屋クーラーを使った室温で大丈夫です。水温が低い時期にいるとでも思われているのでしょうが、実際は夏~秋の磯でも多くの近海魚が見られます。カサゴだってアナハゼだって九州にも生息します。よく暑さに弱いと言われる種でなければ、高温耐性は熱帯魚とあまり変わりません。水槽が一つでなければ、水槽クーラーより部屋クーラーがおすすめです。遠慮なく近海魚を飼ってみましょう。

ここからはあまりない質問です。

Q.うちの魚が大きくなると知らなくて(または知っていたけどやっぱり)水槽が狭くなっちゃった!

A.取る手段はいろいろあります

 淡水魚も含めて述べます。大型魚(最大サイズが約50cm以上)の子供が観賞魚として売られていることはよくありますね。魚に必要な水槽の広さは正確にはわかりませんが、私は水槽幅が魚の大きさの10倍あれば広いと思います。そう仮定すると、200cmの水槽でも30cmの魚が「それなりに」飼える広さにすぎません。軽く60cmになる魚、例えばアロワナや大型ナマズやコロソマは2m水槽でも全く足りないということになります。海水魚で身近なイシダイもクロダイもメジナも50cmに達し、全然足りません。水槽が狭いと、または餌が少ないと成長が止まる魚がいますが、あてにしないのが賢明です。
 こういう大型魚の子供が手軽に買える状況は、私も長い間「売る側のモラルも問題」と思っていました。しかし、考えてみると「最後まで責任を持って飼う」というのは「寿命が尽きるまで飼う」とは言っていません。「買った生き物なら野外に放棄しない、海で採集して逃がすなら採集地へ」を守れば、食べるか標本にするかよそに譲るか、最悪身勝手を承知で殺処分してもいいはずです。ペットショップにあらかじめ聞けば引き取ってくれることもよくあり、ほぼ東京周り限定ですが観賞魚の買い取りをしているお店もあります。大型魚の子供は、養殖感覚で途中で食べる等の処理をすることを前提としているのでしょう。
 なお、淡水の生き物は採集地に逃がしても、水槽によその川の病原体などが入っていて破壊的になる恐れがあります。




Q.死滅回遊魚ってチョウチョウウオとヤッコのことじゃないの?

A.それは大間違いです

                  
    タイワンメナダ。死滅回遊魚です。それに静岡、神奈川、千葉ではレアなようです。死滅回遊魚・レア種ハンターの諸兄は探してください。

 「海水魚 採集」で検索すると多くの採集者さんのサイト、ブログが見られます。その多くは死滅回遊魚のみを対象としており、さらには死滅回遊魚採集と称しているのにチョウチョウウオとヤッコしか記録していない人がいます(ひどい場合その内容で大自然に感謝している)。そこの海には他の死滅回遊魚がいない、なんてありえないでしょう。これは虚偽記載です。ニザダイ、スズメダイ、ベラ、モンガラカワハギ、ヨウジウオ、ミノカサゴ等のどれかが加わって少々増えても同じです。
 死滅回遊魚は他にも多くのグループがいます。アジ、フエダイ、クロサギ、ヒメジ、ハタンポ、ブダイ、ハゼ、ボラ、イットウダイ等です。せめて記事以外の箇所に「チョウチョウウオが好きです」とでも書いておけば、読む前に内容がわかります。「海水魚採集」「死滅回遊魚採集」しか記述がないと、2つや3つのグループしか見られないとは予想しません(5つくらいでも詐欺だと思うのですが、妥協します)。少数のグループが好きでもいいのですが検索妨害はやめて欲しいものです。詳しくない人が見たら、ほんの少しの死滅回遊魚がその全てだと勘違いしてしまう恐れもあります。



Q.海水魚採集開始のシーズンって7、8月じゃないの?

A.3、4月です

 死滅回遊魚が多くなる時期なら7月か8月で合っています。しかし、海水魚全体となると4月、地方によっては3月から始められます。こちらも虚偽記載の問題ですね。春の海はカジカやウミタナゴ等、やや高温に弱い春ものの魚が豊富です。丈夫な種類でも、ホウボウやタカノハダイの幼魚は春にしか見られません。所によっては春から秋まで見られるのに、別の地域では春しか見られないという種類もいます。春は勝負所なのです。6月や7月は、春や秋に比べると半端な時期でしょう。
 死滅回遊魚だけでないすべての海水魚をしっかり記録、採集、飼育している人は採集者の1割といったところです。特定の死滅回遊魚しか記録しない人はニシキハゼとかスイとか、あからさまな珍種を見ても見なかったことにするんでしょうか?長年採集している人でも初採集種を出し続けています。セグロチョウとかツキチョウとかを当たり前に捕っている達人やら中級者であれば、全ての魚を毎年見ていたらすごい物を見つけられると思うのに惜しいです。

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